日本には四季折々の行事があります。
息子たちが小さかったころ、あたりまえのように、春は桜の下でお花見をし、夏は七夕の短冊に願いごとをかき、秋はすすきをかざって満月を見上げ、冬は冬至にゆず湯に入ったりして、季節の行事を楽しんできました。
ところが、ある日ふと思ったのです。なぜお花見は桜なのかしら。なぜ、端午の節句にしょうぶ湯にはいるのかしら。少しずつ調べてみました。
すると、季節の行事には、祖先たちから受け継がれてきた自然への感謝と共生への願いが、脈々と流れていることに気づきました。そして行事のひとつひとつに、自然とからんだ小さな物語があることを知りました。
私はこのことを子どもたちに知ってもらって、自然ともっとなかよくなってほしいと思いました。
たしかに今、都会の土はコンクリ―トの下にかくされ、空はたちならぶビルに四角く区切られています。しかし、土も空もむかしのまま、変わらずにちゃんとそこにあります。
土にふれ、空を見上げ、風のあたたかさや雨のにおいを感じたり、木の葉のそよぎや木もれ日に気づいたり、早起きして朝焼けの空をながめたり……遠いむかし、同じ大地に立っていた人たちと同じ感覚を、私たちも五感で感じることができるのです。
この小さな絵本には、季節の行事のお話と身近な自然のあそびがたくさんつまっています。行事によっては由来にさまざまな説があり、どれを紹介したらよいのか迷うこともありました。そんな時、私は母や叔父など、まわりにいる年長者の意見を参考にしました。ですからかなりわが家流です。
この絵本を手にとってくださったみなさんも、ぜひそれぞれの家庭の味にアレンジして、季節の行事やあそびを楽しんでください。そして、さいとうしのぶさんが描いてくださった家族といっしょに、自然と共に生きることのすばらしさを感じてもらえたらうれしいです。
著者紹介
<文> すとうあさえ
東京都に生まれる。お茶の水女子大学卒業。幼児教育番組の制作を経て絵本の世界に入る。絵本に「まあばあさんのゆきのひのピクニック」「ざぼんじいさんのかきのき」(以上岩崎書店)「ちょっぺいじいちゃん」(文研出版)「ひなたむらのしんまいおまわりさん」(PHP研究所)「ひなたぼっこいし」(韓国ウーンジン社)など。紙芝居に「ないしょのゆきあそび」「くまくみちゃーん」(以上童心社)などがある。駒場幼稚園(目黒区)であそびクラスを担当している。NPO PLANET A TREE OLANT LOVE 理事。
<絵> さいとうしのぶ
大阪府に生まれる。嵯峨美術短期大学洋画家卒業。インテリアテキスタイルなどのデザイナーを経て、絵本の世界に入る。作品に「あっちゃんあがつく」「しりとりしましょ!」「おしゃべりさん」(以上リーブル)「ぎゅうって」(ひさかたチャイルド)「おいしいおとなあに?」(あかね書房)「十二支のかぞえうた」(佼成出版社)などがある。現在、手作り絵本サークル「ぴーかーぶー」で手作り絵本を広める活動もしている。
書評情報
産経新聞(平成20年5月5日)の産経児童出版文化賞の受賞作品の掲載の欄で、『本のつくりが小型でハンディーなのですが、幼い子どもにとっては、この小ぶりであることが、かわいらしい手で本を持ち、描かれた絵をじっくりと見ながら、本を愛するようになる、ひとつのポイントになるように思います。色合いも穏やかでほのぼのと、とてもよい感じです。』(一部抜粋)と紹介してくださっています。